「経済的DV」について

当事務所には、ご夫婦の間の金銭にまつわる問題について相談に来られる方が多くいらっしゃいます。

最近、テレビやインターネットで耳にする機会が増えた「経済的DV」という言葉のように、生活に直結する夫婦間の金銭問題は、場合によっては深刻な問題となります。

ここではご夫婦のお金の問題に関連して、「経済的DV」とは何か、法律の面から注意すべき点、解決方法について詳しく解説します。

目次

経済的DVとは?

「経済的DV」という言葉は法律的な用語ではないため、具体的にどのような場合を指すのか、その定義は発信元のメディアによって様々ですが、おおまかな意味としては、配偶者に対して経済的な締め付けを行うことを指していることが多いです。

当事務所に寄せられた相談の中には、「ご主人が生活費を渡さない」「パートなど外で働くことを禁止されている」などといった内容のものもありました。

そもそも、対等の立場にあるはずの夫婦の間で、配偶者に対して「ある行為を行わないように命令する」関係が生じていることに、疑問を感じずにはいられません。

また、経済的な問題については、主に生計を維持する立場であるご主人側が、奥様に対して経済的な締め付けを行うケースが大半を占めています。

とはいえ、反対にご主人からの相談で、給料をすべて奥様に預けているにも関わらず、奥様からわずかな小遣いしか渡されていないという相談も少なくありません。

法律の面からの注意点

「経済的DV」は夫婦の数だけさまざまな様相を呈しており、繊細な問題であることがわかりましたが、このような経済的な問題について、どのように考えるとよいのでしょうか。

まず、注意しなければいけない点は、「経済的DV」という言葉が法律的な言葉ではないことです。

たとえば、暴力的な虐待行為であるDV(ドメスティック・バイオレンス)は、厳密に定義されているわけではありませんが、DV防止法のように一般的な言葉として広く認知されています。

対して「経済的DV」は、メディアが法律的な用語であるかのように用いていても、実際には法令の正確性や厳密性が確保されておらず、現在のところ一般化された言葉ではありません。

しかし、法律的な言葉ではなかったとしても、実際の相談では経済的に深刻な問題を抱えている相談者の方も数多くいらっしゃいます。

そのような問題意識が「経済的DV」という言葉に表れていると考えられます。

解決方法について

法令用語として定められてはいなくても、深刻な問題である「経済的DV」について解説してきました。

では、配偶者からの経済的な締め付けがあった場合、どのように対応するとよいのでしょうか。

まず考えなければいけないのは、ご自身に婚姻関係を続ける意思があるのか、それとも離婚をする方向で話を進めていくのか、についてです。

弁護士事務所に相談に来る方は、多くの場合、経済的なことは問題の一部分に過ぎず、さまざまな不満や問題が積もり積もった結果、離婚を想定されています。

他方で、結婚生活は続けることを前提として、経済的な問題を解決したいという方もいらっしゃいます。

結婚生活を続けていく意思があるのであれば、第三者が加入することによりご夫婦の信頼関係が損なわれたり、より問題が複雑化したりといったことも考えられるので、可能な限りご夫婦で話し合って解決を目指していただくのが、本来は望ましいです。

しかし、当人同士の話し合いでの解決が難しく、第三者の手を借りたい場合には、家庭裁判所での「円満調停」を利用するとよいでしょう。

「経済的DV」の問題は家庭内のプライベートな事柄に触れることとなり、第三者はもちろん、金銭の問題も絡んでいるためご自分のご両親にも相談しづらいものです。

「円満調停」では、調停委員2名が間に立って、家庭内の問題が解決するように手助けをしてくれるので、精神的な負担を軽減させつつ、客観的な視点で話し合いを進めることができます。

離婚を希望する場合

反対に、結婚生活の継続を望まず、配偶者との離婚を考える場合はどのように対応するとよいのでしょうか。

離婚を希望するまでに至っている場合、経済的な問題以外にも、さまざまな不満やすれ違いが積み重なっていることが多いです。

そのため、離婚に向けて話し合いを進めるとしても、解決方法はそれぞれのケースに応じて考える必要があります。

離婚へ進めるために離婚調停を利用するのか、その前にご夫婦で話し合うのか、状況によっては一旦別居をしてから離婚の手続きを進めることが適切な場合もあり、柔軟に対応しなければなりません。

しかし、配偶者から経済的な締め付けを受けている相談者の場合、問題解決までの間の生計維持が難しいといったことが考えられます。

そのような場合に備えて、ご実家などに相談をして当面の生活をサポートしてもらえる態勢を整えておくと、無理なく話し合いを進めることができるでしょう。

ご実家のサポートが得られない場合には、婚姻期間中の生活費の分担を請求する「婚姻費用分担の調停」を申し立てて生活費を確保する、などの方法も考えられます。

いずれにせよ、ご夫婦やご親族を交えた話し合いで離婚が難しい場合には、弁護士を代理人に立てたり、離婚調停を申し立てたりして、問題を解決していくことになります。

離婚調停の申し立ての際には、前述した婚姻費用分担の調停を合わせて申し立てることも少なくありません。

仮に離婚協議中であっても、婚姻関係にある場合は主に生計を維持する側がその配偶者に対して生活費を支払う義務があるため、婚姻費用の請求が可能です。

まとめ

このように、「経済的DV」に対する解決方法はさまざまです。

法律の専門家である弁護士であれば、状況をうかがった上で相談者に一番適した解決案を提案することができますので、配偶者からの経済的な締め付けにお困りの場合には、一度相談を検討するとよいでしょう。

武田法律事務所は、個人の方の離婚問題・男女問題を数多く手掛けております。法律事務所が初めてという方、相談だけしてみたいという方も数多くお越しになります。

問題に直面していてどうして良いか分からない、心配であるという方も、それぞれの方の事情に応じて親身にご相談に応じさせていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。

執筆者情報

「ある日突然、法律のトラブルに直面した方の手助けをしたい。」 当事務所ではそのような理念の下で弁護士業務を行っています。 事務所には、弁護士に相談するのが初めてという方が多く来られます。 そのような方々に、法律上できるだけのサポートをさせていただきます。 弁護士として13年目になりますが、その間、離婚問題・男女問題について 数多くの事件を取り扱ってきました。 悩みを一人で抱え込まずに、お気軽に御相談ください。|弁護士紹介はこちら

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