裁判離婚
調停で離婚が成立しない場合,訴訟を提起して,離婚を求めることになります。訴訟を起こす側のことを原告、起こされる側のことを被告と呼びます。
協議や調停の段階では,当事者双方が離婚に合意しない場合には,離婚は成立しません。しかし,裁判の場合、当事者間のどちらか一方が離婚に合意しなくても、離婚を認める判決となれば、法的強制力によって離婚することができます。
裁判離婚は、協議離婚、調停離婚と異なり,法律の専門知識や技術が必要です。本人で行うことも可能ではありますが,裁判離婚を行うのであれば、初期段階から弁護士に依頼することをお勧めいたします。
裁判を行うには,訴訟費用の経済的負担に加え,時間や労力、精神的負担の覚悟が必要です。また,最終的に望み通りの判決が出るとは限らないということも覚悟しておくべきでしょう。
離婚事由について
裁判で離婚が認められるためには,法律で定められた離婚事由を備えていることが必要です。このため,訴訟を提起する場合には、下記の離婚事由に該当しているかどうかを慎重に見極めることが必要です。
・不貞行為
配偶者に不貞な行為があったとは,自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的な関係を結んだ場合です(最判昭和48年11月15日民集27巻10号1323頁)。
ちなみに,他方配偶者が不貞行為を許した場合には,それが,離婚を認めるべきかどうかという判断で考慮される場合があります。
・悪意の遺棄
配偶者から悪意で遺棄されたとは,同居,協力,扶助義務を履行しないことが社会的倫理的非難に値する場合を意味します。夫が他の女性と生活し,妻子に生活費を送らない場合が典型例と言われています。
・3年以上の生死不明
配偶者の生死が3年以上明らかでないときにも,離婚が成立します。
・回復の見込みがない強度の精神病
配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないときにも離婚が成立します。ただし,配偶者の今後の療養や生活等について具体的な見通しが経たない場合は,配偶者は過酷な状況に置かれることになります。したがって,離婚判断においては,この点も含めて判断されることになります。
・その他の婚姻を継続しがたい重大な事由
婚姻関係が不治的(治らない程度に)破綻している場合を意味します。破綻とは,主観的な面から夫婦としての信頼関係や絆が完全に切れていること,客観的な面から回復の見込みがないことという点から判断されます。
具体的には,以下のような場合が挙げられます。
・長期間の別居
・暴行
・虐待
・重大な侮辱
・浪費
・犯罪行為
・過度な宗教活動
※ただし,上記に当てはまる場合でも,個々のケースによっては離婚が認められない場合ありますので,注意が必要です。
裁判離婚の手続
裁判離婚のためには、訴状と証拠,戸籍謄本、調停不成立証明書等の必要な書類を整え、夫または妻の住所地を管轄とする家庭裁判所に,訴訟の申立てをします。
訴状の作成,証拠との取りまとめには、法律知識が必要不可欠です。このため,裁判離婚を行う際には、専門家である弁護士に依頼することをお勧めします。
裁判離婚の注意点
裁判離婚では、原則として、離婚原因を作った有責配偶者から離婚の申立てをすることができません。例えば,浮気相手と結婚したいがために、浮気をした夫から妻が離婚の請求をすることは認められません。もっとも、例外的に,下記のような一定の条件を満す場合には,有責配偶者からの離婚が認められるケースもあります。
・別居期間が相当長い
・未成熟の子ども(親から独立して生計を営むことができない子ども)がいない
・離婚請求された相手方が精神的、社会的、経済的に過酷な状態におかれない
しかし,有責配偶者からの離婚請求が認められるためのハードルは高く,上記の条件が満たされているかを慎重に判断することが必要です。
