新型コロナウイルス感染症と離婚について
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って,私たちの生活は大きく変化しています。
インターネットを検索すると「コロナ離婚」という言葉も出てきますが,ここでは新型コロナウイルス感染症の拡大と離婚との関係について,当事務所に寄せられた相談を踏まえ考えていきたいと思います。
ただし,新型コロナウイルス感染症の拡大による社会的な影響は日々変わっており,この記事を作成している令和2年6月現在の状況であることには注意していただきたいと思います。
「コロナ離婚」という言葉はまだ一般的ではないようです。
テレビやインターネットを見ていると,在宅ワーク,在宅勤務によって家にいる時間が増え,DV やストレスが生じることによって離婚に至ることを言っているようです。
当事務所では比較的離婚の相談を多く受けていますが,今のところ在宅勤務が増えたことが理由で離婚に至るというケースはほとんどありません。
また,在宅勤務の結果DVが増えたという相談も特に寄せられていません。
離婚相談では,そもそも離婚を検討していて,新型コロナウイルス感染症とは関係なく,離婚を希望するというケースがほぼ全てです。
このため,それぐらい強い意思を持って離婚を決意している方が,弁護士にご相談に来るのではないかと予想しています。
その結果,新型コロナウイルス感染症の拡大とは関係なく,弁護士に離婚協議を依頼したり,離婚調停を依頼される方が大多数と言えます。
このように,あくまで令和2年6月現在の状況ですが,「コロナ離婚」と呼べるような現象は,少なくとも当事務所では見られていないというのが実際のところです。
もっとも,当事務所は岐阜市の事務所であるため新型コロナウイルス感染症の拡大は比較的押さえられており,影響が小さいということが理由となっている可能性も否定はできません。
しかし,新型コロナウイルス感染症の拡大がこれまでの離婚事件に影響を与えないかと言えばそうではありません。
離婚を強く希望し,離婚に動き出していた当事者にとっては新型コロナウイルス感染症の影響は多く見られました。
相談の中で多かったのは,特別定額給付金の問題です。
10万円の特別定額給付金は基本的に世帯主の口座に振り込まれるため,別居をしていたり夫婦関係が良くない場合には,特定定額給付金を夫が受け取ってしまうという可能性があります。
DVによる別居のケースについては総務省のホームページに記載がありますので,ご確認いただくと良いと思います。
次に,離婚調停を行っているケースも大きな影響を受けました。
新型コロナウイルス感染症の拡大,またそれに伴う政府の緊急事態宣言の影響で,多くの離婚調停が延期となりました。
期日が延期となっただけではなく,次の期日が決まらない宙ぶらりんの状態が続きました。
緊急事態宣言の解除に伴い徐々に新しい期日が決まっている状況ですが,多くの事件では調停が止まり,離婚協議が進まないという状況が続いています。
また,面会交流についても影響がありました。
夫婦が別居している場合,新型コロナウイルス感染症にかかることが心配で,以前は別居中の子供と面会交流ができたケースでも,面会交流ができなくなるというケースが多く見られました。
このようなケースでは,LINEのビデオ通話を活用するなどによって間接的に面会交流を続けるというケースもありました。
このほか,弁護士に依頼しているケースで無視できない影響は,新型コロナウイルス感染症が心配で,外出を控えたり,事務所での打ち合わせを控えることで,なかなかコミュニケーションが取れないということがありました。
弁護士事務所は閉鎖空間ですので,若干のリスクはあるのかもしれません。
しかし,緊急事態宣言の解除に伴い,心理的な恐怖心も和らぎ,徐々に打ち合わせができる環境が整ってきました。
弁護士との打合せは,基本的に一対一の話し合いで,多数が密集している訳ではありませんので,マスクの着用により感染リスクは相当に低減すると思われます。
ただし,第二波の可能性にも注意しつつ,打ち合わせや法律相談を行っていくことが必要だと考えています。
最後に今後の予測です。
やはり企業の倒産や失業のリスクは増加することと思います。
このため,養育費を支払う側・受け取る側ともにそのようなリスクを考える必要があります。また,住宅ローンについても今後の先行きが不透明なこともあって,慎重に協議する必要がありそうです。
経済の落ち込みは可能性として相当高くあると見られていますので,そのような経済状況・社会状況が家庭に悪影響を及ぼすこともあり得ます。
以上,当事務所における相談を踏まえ,新型コロナウイルス感染症の拡大と離婚との関係を整理してきました。
今後の状況も注視していき,またあらためて情報を掲載することを予定しています。